世界的に脱炭素への取り組みが進むなか、これまで多くの企業が採用してきたのが、再エネ利用100%を目標に、年間で電力使用量と再エネ調達量を一致させる調達方式です。しかし、この方法では夜間や天候の影響を受ける時間帯には化石燃料由来の電力を使わざるを得ない状況が見えにくく、実態とのギャップが大きい状況が課題となっています。
こうした背景から、発電と消費を1時間単位で一致させる「24/7カーボンフリーエナジー(24/7 CFE)」という考え方が注目されています。この記事では、24/7カーボンフリーエナジーの概念や国際的な動向を整理し、企業が今後どのような変化に備えるべきか解説していきます。
世界で進む24/7カーボンフリーエナジー(24/7 CFE)とは
24/7カーボンフリーエナジーとは、企業が電力を使用するすべての時間帯において、カーボンフリーな電力でまかなわれている状態を目指す考え方です。従来の年間で電力使用量と再エネ調達量を一致させる方法とは異なり、実際の使用と発電のリアルタイムな一致を重視する点が特徴です。
ここでは、その仕組みと広がりの背景を解説します。
24/7カーボンフリーエナジーを実現する電力調達の考え方
24/7カーボンフリーエナジーを実現するには、電力を使用する各時間帯の需要に対し、同じ時間帯に発電されたカーボンフリー電源を対応させる考え方が重要です。年間で電力使用量と再エネ調達量を一致させる従来方式では、夜間や天候条件によって化石燃料由来の電力が使われる可能性が残ります。
そのため、時間単位で電力の需給を把握し、使用状況に応じたカーボンフリーな電力を確保していくことが求められます。
※参照:24/7 Carbon-Free Energy | United Nations
24/7カーボンフリーエナジーが広がった理由
24/7カーボンフリーエナジーが注目される背景には、年間で電力使用量と再エネ調達量を一致させる従来方式では、実際の電力利用状況が脱炭素目標に十分反映されないという課題があります。昼間は再エネで対応できても、夜間には化石燃料による電力に頼らざるを得ない場面があり、このギャップが問題視されてきました。
この課題を示したのがGoogleで、すべての時間帯でカーボンフリーな電力を確保する必要性を提唱しました。
24/7カーボンフリーエナジーを後押しする「24/7 CFEコンパクト」とは
24/7 CFEコンパクトは、企業や自治体が電力を使用するすべての時間帯において、カーボンフリーな電力を確保することを目指す国際的な枠組みです。国連が中心となり、時間単位での電力使用実態に即した脱炭素化を推進する取り組みとして進められています。ここでは、24/7 CFEコンパクトの概要や参加組織、対象範囲について解説します。
24/7 CFEコンパクトの概要
24/7 CFEコンパクトは、電力を使用する各時間帯においてカーボンフリーな電力でまかなうことを目指す国際イニシアティブです。2021年に国連主導で発足し、年間ベースでは把握できない電力使用の実態を踏まえた新たな脱炭素の考え方を示しています。
参加団体は、時間単位での電力調達や地域におけるカーボンフリーな電力の活用など、実践的な取り組みを進める役割を担います。
※参照:24/7 Carbon-Free Energy | United Nations
24/7 CFEコンパクトを支える参加組織
24/7 CFEコンパクトには、政府機関、テック企業、エネルギー会社、大学、NGOなど多様な組織が参加しています。GoogleやMicrosoftのような先進企業に加え、電力会社や地域自治体も加わり、技術開発から証書制度、政策議論まで幅広い領域で連携が進んでいる状況です。
24/7 CFEコンパクトの参加対象
24/7 CFEコンパクトの参加対象は、電力を使う企業だけでなく、電力を供給する事業者、地方自治体、投資家、学術機関まで幅広く設定されています。電力調達だけでなく、証書発行や技術開発に関わる組織も参加できることが特徴であり強みです。
多様な主体が参画することで、時間単位でカーボンフリーな電力を確保する仕組みが広がりやすくなり、企業の実行環境も整備されていきます。
24/7 CFEコンパクトが重視する5つの視点
24/7 CFEコンパクトは、時間単位でカーボンフリーな電力を確保するために必要な要素を5つの視点で整理しています。ここでは、その重点領域について解説します。
電力の1時間ごとのマッチングの実現
1時間ごとのマッチングは、電力を使うタイミングと同じ時間帯に発電されたカーボンフリーな電力を対応させる取り組みです。実現には、発電量の細かいデータ取得やグラニュラー証書(1時間単位の発電を証明する証書)の活用が欠かせないものとなるでしょう。
この仕組みを活用することで、夜間や気象条件による不足も把握しやすくなり、自社の電力調達をより実態に合わせられます。
カーボンフリー電力の現地調達の達成
現地調達は、企業が事業を行う地域でカーボンフリーな電力を確保する考え方です。遠隔地の発電所由来の証書だけを用いる場合、地域の脱炭素への貢献が見えにくく、電力使用実態とのズレが生じやすくなります。
現地調達に取り組むことで、地域の電力網への影響や発電設備の状況を踏まえた電力調達が可能になります。
幅広いカーボンフリー電力の活用拡大の実現
この視点では、特定の電源に依存せず、太陽光、風力、地熱、水力に加えて原子力など、幅広いカーボンフリー電源を活用する方針が示されています。電源の種類を限定しないことで、発電量が不足しやすい時間帯でも、安定した電力マッチングが行いやすくなります。
企業が24/7カーボンフリーエナジーの実現に取り組む際は、複数の電源を組み合わせた調達設計などが欠かせません。
新たな再エネ電源の創出・追加性の達成
追加性とは、既存設備に依存するのではなく、新たに建設された再生可能エネルギー電源から調達する取り組みです。電力証書だけで目標を満たす方法では電力網全体の脱炭素化が進みにくいため、新規設備への投資や長期契約が重視されます。
企業が実行する場合、開発段階の発電所とのPPA検討や、稼働年数の基準を確認した調達選定が必要です。
電力網・社会全体への影響の最大化
電力網へのよい影響とは、カーボンフリーな電力が不足しやすい時間帯においても安定した供給を実現し、地域全体の脱炭素を後押しする状態を指します。また、再生可能エネルギー開発による雇用創出や技術普及など、社会面での波及効果も含まれます。
企業がこの視点に取り組む際は、地域への影響評価や政策動向の確認が重要です。
24/7 CFEコンパクトに参加すると得られるサポート
24/7 CFEコンパクトは、自社だけで複雑な取り組みを進めるものではありません。参加団体同士が学び合い、専門的な助言を受けられる環境が用意されており、はじめて取り組む企業でも進めやすい体制が整っています。ここでは、おもなサポート内容について解説します。
※参照:24/7 Carbon-Free Energy: Methods, Impact & Benefits
メンバー同士で学び合える場への参加
参加企業は、公開ワークショップや個別セッションに招かれ、他のメンバーと取り組みや課題を共有できます。先行企業の実例を学べるため、自社だけでは気づきにくい改善策を得やすくなります。実務担当者同士で情報交換できることも大きな魅力です。
こうした場を活用することで、取り組みの進め方や必要な体制づくりを具体的に把握できます。
自社の状況に合わせたアドバイスの提供
専門チームによる個別ガイダンスを受けられることも特徴です。時間単位での電力調達や証書の扱いなど、企業ごとに異なる疑問に対して具体的な助言が提供されます。組織の特性や課題に合わせたアドバイスを受けられるため、導入時もスムーズに進めやすくなります。
業界ニュースやイベント情報の取得
参加団体には、24/7カーボンフリーエナジーに関する最新ニュースや好事例が定期的に共有されます。海外の動向や政策変更など、変化の早い領域を効率よく把握できることが魅力です。関連イベントやセミナーの案内も届けられるため、最新情報を踏まえた戦略づくりが進めやすくなります。
今後求められる脱炭素の取り組みの変化
脱炭素に向けた基準は年々厳しくなり、企業に求められる行動も大きく変わりつつあります。これまでの「年間で電力使用量と再エネ調達量を一致させる」やり方だけでは不十分になり、電力の使用実態に沿った取り組みが期待されます。ここでは、今後の脱炭素に関する取り組みの変化について解説します。
電力調達の時間基準への移行
ここまで解説してきたように、電力調達は年間単位ではなく、1時間ごとにカーボンフリーな電力でまかなえているかが重視されていくと考えられます。企業は、自社の需要カーブを把握し、時間別での調達計画を立てる必要があるでしょう。蓄電池の活用や調達先の見直しなど、運用面での工夫も大切な要素となります。
再エネ調達の実態重視の強化
証書購入だけでも再エネ利用とみなす考え方は徐々に弱まり、実際にどの電源から供給された再エネかが問われます。電源の所在地や種類も評価対象となり、企業は、発電量だけではなく電源の属性まで確認する姿勢が求められるようになると考えられます。
新規カーボンフリー電力の追加性の強化
既存の電源を買うだけでは不十分となり、新たな再エネの創出へ貢献しているかが重視されます。自家発電やPPAなど、追加性を持つ方法への移行が進んでいくと考えられます。企業は、調達の背景や追加性へのインパクトまで説明できる仕組みの整備が必要となりつつあります。
排出量算定の厳格化
温室効果ガス排出量の算定方法は、より高い精度が求められるようになり、時間別・地域別の排出係数を踏まえた計算が主流となるでしょう。算定ロジックの透明性が重要視されるため、企業はデータ管理や算定ルールへの理解を強化する必要があります。あわせて、社内基準の見直しも重要となります。
24/7型の電力調達への移行
24/7型の電力調達の流れは、短期的には一部の先進企業から始まりますが、将来的には一般企業にも広がっていく可能性があります。その際は、電力需要を時間単位で把握し、必要に応じて蓄電池や複数の電源を組み合わせる対応が求められるでしょう。そのため、自社のエネルギー管理体制を早期に整えておくことが重要になります。
まとめ
再生可能エネルギーの調達は、従来の「年間で使用量と再エネ調達量を一致させる」方式から、電力を利用する"その時間"がカーボンフリーであることを重視する「24/7型」へと転換の動きが加速しています。こうした取り組みは電力調達の透明性を高めるとともに、新たな再エネ発電設備の導入による「追加性」など、より実態と効果に即した脱炭素活動が企業にも強く求められるようになっています。
今後は、時間単位での電力需給管理や、カーボンフリーであることを証明できる仕組みの導入がますます重要となっていきます。企業はこうした電力マッチングや証書制度を積極的に活用し、持続可能な姿勢を示すことが今まで以上に経済活動の前提条件となりつつあります。
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執筆者:SCSK株式会社 EneTrack事務局